林敏行
世界遺産の参詣道が通る奈良県黒滝村の黒滝川に、真っ赤な鳥居を重ねたような構造物がある。鋼鉄の直径は58センチあり、全体の高さは13メートル、幅35メートル。水の流れを遮らない「透過型」と呼ばれる砂防ダムで、倒木や巨岩の流出を食い止める。
土石流による下流の住宅の倒壊や浸水を防ぐため、「不透過型」と併せて一帯では三つの砂防ダムを整備。2015年度に工事が始まり、昨春に完成した。工事に関わった県の担当者によると、現場周辺の土の色に合わせて、鋼鉄は赤色に塗られた。
9月4日、黒滝川上流の山肌が大きく崩落した紀伊半島大水害から12年を迎える。当時も砂防ダムはあったが土石流を防ぎきれず、下流の集落では住宅1戸が倒壊、14戸が浸水し、橋が壊れるなどの被害があった。
村によると、ダム周辺の道路復旧はさらにあと3、4年かかるという。担当者は「伐採や植林による山肌の管理が土石流防止には重要。山に入る道路整備も大切」と話す。
住宅などに近接する土砂災害警戒区域は、全国で約68万カ所。各自治体が被害軽減のための工事を進めているが、指定区域の数が多く個人の備えも求められている。(林敏行)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル